2023/02/14 17:53

前線で活躍するビジネスパーソンのリアルなインタビューを通じて「オールウィークスーツ」の魅力を伝える本連載。今回はオールウィークスーツを発案したソーイングアサヒ株式会社代表取締役の髙橋 英一郎さんに、オールウィークスーツ誕生までのお話と、ものづくりに込める思いについて聞いてきました。


## プロフィール

ソーイングアサヒ株式会社 代表取締役

髙橋 英一郎 (Eiichiro Takahashi)


(((1962年生まれ、千葉県旭市出身。アパレルメーカーを経て1988年ソーイングアサヒ入社。

千葉県旭市にて1973年の創業以来50年近く、高品質のものづくりにこだわり、高級婦人服を中心に、縫製加工、企画・製造・販売。首都圏を中心としたデパートで並ぶレディースの他、キッズ、学生服、企業ユニフォーム等々、多くの洋服づくりに携わる。これからのファクトリーブランドとして、若手デザイナーのバックアップ、縫製職人の次世代育成、地域貢献、SDGsを推進。)))

会社HP https://www.sac-jp.com/

Instagram https://www.instagram.com/sewing_asahi/











## ピュアな気持ちと、危機感の気持ち。新しいスーツのカタチを提案する自社ブランドを始めたきっかけとは


#### ── 本日はよろしくおねがいします。早速ですが、そもそも自社のブランドを作ろうと思ったきっかけや、思いについてお聞かせください。

よろしくお願いします。
そうですね...ずっと繊維工場という業界でものづくりしている中で、「自分たちのブランドをつくってみたいな」という素直なピュアな気持ちを持ったことがきっかけです。

あとは、実はピュアな気持ちと同じくらいの危機感もあったんですよね.。



昔は、縫製工場が自社ブランドを持つのはタブーだったんです。けど時代が変わっていく中でそうじゃなくなってきていると思っています。
今の時代は自分たちで作って、自分たちで売って行かないと生き残れないかもしれない...今の縫製工場の環境って決してよくはないと思っていて。

受注だけだと仕事のある時とない時の端境(はざかい)期があったり、とにかく変化が激しいので、柱をひとつ持っていかないと経営的にも厳しいなという場面に差し掛かっています。そこであえてメンズ向けの新しいカタチを提唱するブランドに挑戦しました。


## きっかけは学校の先生のワンシーンから。ジャージの動きやすさと、スーツのかっこよさをいいとこ取りした新しいスーツを


#### ── 改めて自社ブランド立ち上げの思いを聞けたところで、今回のオールウィークスーツはどういったきっかけで発案されたのですか。

きっかけは一昨年の夏、繊維商社の人と一緒に仕事をしていたんですが、その時に「こんな素材があるんですよ。髙橋さんなにか作りませんか?」と100%リサイクル糸で作られた生地をご紹介してもらったことが始まりです。

(((オールウィークスーツの生地はよく伸びる素材を使っています)))


サスティナブルで、ジャージ素材のようなその生地を家に持ち帰り、さぁ、なにをつくろうかな..と考えてみました。
色々思いがはりめぐらされてその日は一晩眠れなくなってしまったのですが(笑)、ふと、「学校の先生って、動きやすいジャージは着るけど、逆に動きにくいジャケットを着てるよな。」と学校での一場面が思い浮かんだんです。
「だったら、この生地で学校の先生向けにジャケットを提案できないか」と思いついたのがオールウィークスーツ発案のきっかけでした。


#### ── 髙橋さんの会社は元からメンズ向けの服は作っていたのですか。

会社としてはそもそも婦人服が中心で、メンズはたまに扱うくらいでした。なので、メンズ向けのスーツ開発は新しい挑戦だったんですよね。

(((ジャケットのポイントについてお話される髙橋さん)))



実は今回のジャケットは女性の婦人服と同じ作りなんです。
一般的な紳士ジャケットは、制作工程に”八刺し※1”や”毛芯※2”など、婦人服では取り入れない縫製の技術を入れて仕上げるのですが、今まで私達が培ってきた婦人服の技術を取り入れ、軽いメンズのスーツ開発も可能なのでは…?ということで、「よし、トライしてみよう」という流れになりました。


※1 ハ刺し(はざし)...衿裏の表地と芯地を縫い合わせること
※2 毛芯(てじ)...表地と裏地の間に入れる補強財(副資材)のこと


#### ── その後はどうやってまわりを巻き込みながら商品開発に進んだのですか。

まずはパタンナーさんに「動きやすいジャケットとパンツをつくりたいんだ」と相談しました。いろいろ話しながら「面白そうだね!こんなジャージ素材のスーツって絶対いいよ!これからこういったものがきっと街中にも出てくると思う。」と言っていただき、話を進めながらパターンをつくってもらいました。

他にも、普通のスーツはストレッチ素材をあまり使わないのですが、オールウィークスーツでは表地と裏地の両方にストレッチ素材を使っています。
当初は表地だけだったのですが、「裏地がつっぱっていたら意味がないので、動きやすさをもっと意識してよさそう」と、社内で意見を出してもらったことがきっかけなんですよね。

(((オールウィークスーツのボタンを縫い付けている様子)))

パンツにも動きやすいテクニックを入れ込んで、素材はリサイクル、エコでサスティナブルな素材を使ったスーツは、社員の協力もあって、どんどんどんどん形になっていきました。



#### ── その後実際にクラウドファンディングをされたかと思うのですが、まわりの方の反応はどうでしたか。

ありがたいことに、前向きな反応が多かったです。特にYouTubeであげたバレエダンサーの動画が「おもしろい」とご好評いただきました。




地元の総合病院の救命救急センターの副センター長が買ってくれたんですけど、話す機会があったので感想を聞いてみたら「あの動画を見たら買いたくなっちゃうよね」と言ってくださり、それだけ動きやすいのが伝わったのだな..と嬉しくなりました。

あとはこれまでになかなか自分のサイズに合うスーツが見つからなかった方々からも「着てみたら着やすいので、はやく着たくてしょうがない!」と非常に褒めていただけました。


#### ── 非常に大好評のようですね。新しいスーツのあり方を提唱していく挑戦について、髙橋さんで何か思っていることはありますか。

私たちのつくっているスーツって、いわゆるテーラーメイドでつくってらっしゃる伝統的な方々からすると、いいのかな、と思うときも正直あります。

一方で、これも時代の流れかなと思う部分もあります。もっと自由に着やすいものを作ってもいいんじゃないのかなと...。
スーツというもの自体もそうだし、工場というあり方もそうですが、今まではタブーと思われたようなものや、人の考え方も変わってきているからこそ、時代に合わせたものも作ろうというのが私の考えです。

(((オールウィークスーツには、こだわりがたくさん詰まっています)))


#### ── 今後海外展開などは考えていらっしゃいますか。

海外への挑戦...ちょっと夢みたいな部分もあるのですが、していきたいなと思っています。国内だけでなく、海外にも日本の技術を知ってもらいたいという思いがありますね。



## ものづくりで大事なのは何よりも”人”。今後のものづくりの未来を守っていくために


#### ── 髙橋さんがものづくりをしている中で大事にしていることはありますか。


うーーーん、そうだなあ…。やっぱり”人”ですね

うちの会社には、スキルの高い子、まだまだ途上の子など、色んな社員がいますが、さまざまなスキルの人がいてこそ、ものづくりができているなと感じています。

(((左:オールウィークスーツ開発者の髙橋さん」、右:インタビュアーの田岡さん。ふたりともオールウィークスーツを着用しています)))

既製服は、ひとりで職人さんが一着つくるのとは違います。CADを使ってパターンデータをつくる人、裁断をする人 、縫製をする人、ボタンを付ける人、アイロンで綺麗に仕上げる人...何人もの人がそれぞれの部門で、それぞれのスキルで集まってやっとできる仕事なんです。

その人達を本当に大事にしないといけないし、まだなかなかできないけど、スキルをあげるためのフォローをもっとしないといけないなと感じています。

人を大事にすることは、ものづくりの未来を考えていくことにも繋がると思っていて。今後の未来を創っていく人たちに技術を伝承して、スキルを持ってもらうことはもっと必要だと思っています。

(((髙橋さんと会社の仲間たち)))

ものづくりに大事なのは”人をちゃんと育てること”。これが私の大事にしている考えです。




## これまでスーツから離れていた人への新しいきっかけに。オールウイークルウィークスーツのこれから



#### ──  最後に、今回こういったプロジェクトにたいして感じていることを率直にお聞かせください。


 

(((実際にオールウィークスーツを着用いただいた寺口さんと握手を交わす様子。寺口さんのインタビューは後日公開予定です、お楽しみに。)))



今回、寺口さんという方に実際に着てもらったのですが、”スイッチが入った”という言葉が印象的でした。

普段あまり着ないジャケットを羽織って、スイッチが入ってテンションが上がったという言葉を聞くと、開発者としてはなかなか感慨深いものを感じます。

ヒントになる言葉もたくさんもらったので、それを活かしながらオールウィークスーツを着ている人たちとも一緒にものづくりをしていきたい気持ちです。


これまでスーツに馴染みのなかった人にも、新しい体験や感想を提供していければと思います。



#### ── 髙橋さん、本日はどうもありがとうございました!





(インタビュアー:田岡 凌、撮影:松本 真実、編集:森長 希奈)